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未解決事件は終わらせないといけないから:その謎には人が人を思う心があるから

伊達 三吾

この1年間あまり、心揺さぶるゲームと出会えていなかった。面白いゲームは確かにあった。2023年はアーマードコア6が発売されたし、ストリートファイター6は競技シーンを始めストリーマー界隈を大いに沸かせた。StarfieldもベゼスダゲーとしてはMODを無しに考えても最高傑作だと言える完成度を誇っていた。

2023年、私がプレイしたゲームは193本あまり、そのうち新しく購入したゲームは127本。そのどれもが金額以上のものを提供してくれた。

だがしかし”心震える”作品はなかった。プレイした後の読後感、誰かに教えたくなるような感覚のゲーム。心臓にひゅっと吹く一筋の風と、暖かく鼓動する感覚。俗に言う胸が詰まるゲームというものに出会えなかった。

あまりにそういった感覚を久しく感じなかったため、私は年齢か、それとも舌が肥えすぎたのか、とかなり悩んだ。何に対しても一歩引いた気持ちが続いていたのだ。

もう私は何にも感動しないし、何事も誰かに伝えることができない。何についても書くことが出来ないでいた。

そうこうしていつしか2024年、エオルゼア(FF14)に入り浸っていた私はあるゲームを手に取った。

それがこの「未解決事件は終わらせないといけないから」である。

ずっと追いかけていたSomiシリーズ

本作「未解決事件は終わらせないといけないから」は韓国のゲームクリエイターであるSomi氏の新作だ。

他人のスマホを利用してテロ容疑の証拠を探す
「Replica」

成果主義と正しさの間で揺れる警察体験をする
「Legal Dungeon」

親に対する憎愛では語れない複雑な感情を読み解く
「The Wake: Mourning Father, Mourning Mother」

これら三作から分かるようにインタラクティブかつナラティブなゲームに定評のあるクリエイターで、彼の作品に込められているメッセージ性はユニーク…というよりかは彼にしか描けない醍醐味と言えるだろう。

それ故にコアなファンが多いクリエイターであるし、私も何を隠そうコアなファンの一人である。

そんな彼の新作が「未解決事件は終わらせないといけないから」である。
今作は各証言を結びつけて、未解決事件を終わらせるミステリー仕立てのゲームとなっている。もちろんインタラクティブなゲームであるのは言わずもがなだ。

優秀な警官が残したたった1つの未解決事件

事の始まりは2012年2月5日、公園で遊んでいた少女・犀華が行方不明になったという通報があった。
警察は聞き込みと捜索を繰り返すが、事件は解決せずに未解決事件の書類ファイルに眠る。

事件を担当したのは清崎蒼警部。
彼女の退職から12年後、ある日訪ねてきた若い警官。
若い警官は清崎が解決できなかった「犀華ちゃん行方不明事件」を終わらせるよう協力を要請してきた。

清崎はバラバラになった証言(記憶)をつなぎ合わせ、整理することでこの事件を終わらせることが目的である。

最初はいくつかの登場人物と発言が出てくる。プレイヤーは発言の中に含まれるキーワードをクリックすることで、新たな発言を発見することができる。また、発言の中には鍵が掛かっているものがあり、発言を確認するために様々な手段でロックを解除する必要が出てくる。

大まかな流れは上記のとおりだが、もう一つ大きな点は時系列及び発言者が特定されていないということである。
プレイヤーは発言の中身を精査し、その発言が誰によっていつされたものなのか、というものを類推しなければならない。これが本作のゲームシステムにおけるキモであり面白い要素である。

未解決事件は終わらせないといけないから

このゲームのテーマは安直に言えば「嘘」である。
ただこの一言に色々なものが含まれている。
誰についた嘘なのか、誰を守るための嘘なのか、誰のために嘘を証明させないのか。

登場人物それぞれが嘘をついている。それが意図的なものである場合もあるし、本人が真実だと思い続けていても嘘だったりする。

私は物事の本質を捉えるのが苦手な人間なため、勝手な感想になってしまうが、本作における「嘘」は幾重にも塗り固められたものだ。だからこそ一筋縄ではいかないし、人が十人十色であるように嘘も十人十色であるならば、幾重にも塗られた嘘は十色混ざり合い極彩色の嘘となる。モノクロに近く二値ペンで描かれる本作のアートスタイルだからこそ、この極彩色の嘘が燦然と美しく輝いて感じられた。

EDは2つ、どちらもそれなりに苦労せずたどり着くことが出来るだろう。というのも本作はSomi氏のゲームではかなりとっつきやすく、ゲームの難易度曲線とプレイヤーの気付きが一致しているのだ。それ故に本作は様々な方におすすめできる作品になっている。何より安い。

そして私がそうであったように、皆さんにも是非EDを迎えて感じてほしいことがある。それは本作のタイトルの秀逸さだ。

”未解決事件”は解決するものではなかった。
なぜなら”未解決事件は終わらせないといけないから”だ。

是非皆さんもこの未解決事件を、終わらせてほしい。解決するよりも尊いものがこの事件の先に待っているのだから。

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